公式ブログ
Conoris VRM Labo

脆弱性スコアとは?セキュリティ評価の基本と戦略への活用手法

Posted on:
February 15, 2024

デジタル時代の急速な進展と共に、セキュリティの重要性が一層増しています。その中で脆弱性スコアは、システムやソフトウェアが潜在的な脅威からどれだけ影響を受ける可能性があるかを評価する不可欠な手段となっています。この記事では、脆弱性スコアに焦点を当て、その基本的な概念から評価の方法、企業のセキュリティ戦略への統合までを解説します。

脆弱性スコアの概要 - スコア毎の特徴と算出方法について

デジタルセキュリティの根幹をなす「脆弱性スコア」。まず、本質的な「脆弱性」の意味に迫り、次に、このスコアはどのように算出されるのかを解説します。加えて、異なる脆弱性スコアの種類や各特徴にも焦点を当て、セキュリティの理解を深めます。

脆弱性とは何か?

脆弱性は、情報システムやソフトウェアに存在する脆い点や隙間を指し、悪意を持った攻撃者がこれを悪用してシステムに不正アクセスを試みる可能性を示します。これは、ソフトウェアの設計や実装上の欠陥、セキュリティ対策の不備などが原因となります。脆弱性は様々な形態を取り、例えば未修正のセキュリティホール、単純なパスワードの使用、不正なアクセスポイントの活用などが挙げられます。組織や企業においては、これらの脆弱性を把握し、積極的な対策を講じることが不可欠です。セキュリティ意識の向上や脆弱性診断ツールの利用により、未然に対処することが求められます。定期的な脆弱性評価と対策の実施は、サイバーセキュリティの要として組織やユーザーのデジタル環境を確固たるものにします。


脆弱性スコアはどのように算出されるのか?

脆弱性スコアは、特定のシステムやソフトウェアの脆弱性の程度を示す指標です。一般的には、いくつかの要因を考慮して総合的な評価が行われます。以下は、脆弱性スコアを算出する際に考慮される主な要因です。

1.脆弱性の深刻度 (Vulnerability Severity):

脆弱性の深刻度は、攻撃者がシステムに与える影響の程度を示します。深刻な脆弱性ほどスコアが高くなります。通常、一般的な評価は「低い」「中程度」「高い」「致命的」などで行われます。

2.脆弱性の利用の容易さ (Exploitability):

脆弱性を悪用するために必要な技術的なスキルや資源がどれだけあるかが考慮されます。容易に利用可能な脆弱性ほど、スコアが高くなります。

3.影響範囲 (Impact):

脆弱性が影響を及ぼす範囲が広い場合、スコアが上がります。たとえば、広範囲のシステムやユーザーに対して影響がある場合、スコアが高くなる可能性があります。


4.修復可能性 (Remediation):

脆弱性が修復可能かどうかも考慮されます。修復が難しい場合、スコアが高くなります。

これらの要因を総合的に評価し、数値や評定で示すことで、脆弱性スコアが算出されます。詳細については次章で解説します。

脆弱性スコアの種類と特徴

脆弱性スコアは、異なるセキュリティ機関やベンダーによって異なる指標や評価方法で計算されることがあります。以下に、一般的な脆弱性スコアのいくつかのタイプとそれらの特徴を挙げてみます。

1.CVSS(Common Vulnerability Scoring System):

CVSSはFIRSTが管理している脆弱性の深刻度を示す広く採用されたスコアリングシステムで、0.0から10.0の範囲で評価されます。基本、影響、環境の3つのメトリクスグループから構成され、攻撃の容易さや影響の範囲などを考慮し、それぞれの要素に重みを付けて全体のスコアが算出されます。

2.CVSSv4.0(CVSSの最新バージョン):

CVSSv4.0では「命名法の追加」や「基本メトリクスと値の追加」がされ、新たな基本メトリクスとその値の追加により、脆弱性の評価がより詳細になりました。さらに、「影響メトリクスの開示が強化」され、脆弱性がシステムに及ぼす具体的な影響をより明確に理解できるようになりました。特に変更された点が、攻撃の難易度を測る項目として、「攻撃の実行条件」が追加され、攻撃による影響を測る項目として、「スコープ」が廃止され、代わりに「後続システムの機密性への影響」、「後続システムの完全性への影響」、「後続システムの可用性への影響」の3項目が追加されました。

3.CWSS(Common Weakness Scoring System):

CWSSはMITRE社が管理していて、ソフトウェアやアプリケーションのセキュリティ上の脆弱性を評価し、その深刻度を定量化するための枠組みです。 このシステムでは、特定の脆弱性に対するリスクを数値化し、その深刻度をレベルとして示します。深刻度のレベルは、脆弱性が悪用された場合の潜在的な影響や被害の程度を表しています。

4.ベンダー固有のスコアリング体系(Vendor-Specific Scoring System):

Vendor-Specific Scoring Systemは、一般的な評価基準やスコアリングシステム(例えばCVSSなど)がカバーしきれない、特定のベンダー固有の要素や状況を評価するためのものです。例としてマイクロソフトの場合「Microsoft Security Update Guide」、アドビの場合「Adobe Security Bulletins」などがあります。

5.EPSS(The Exploit Prediction Scoring System):

EPSSは、FIRSTが管理する脆弱性悪用スコアリング・システムです。広く利用されているCVSSが、脆弱性の特性に基づくスコアリングを行うのに対して、EPSSは対象となるソフトウェアの脆弱性が実際に悪用される「確率」を表した指標です。具体的には、今後30日間にその脆弱性が悪用される確率を0%から100%の間で算出します。

これらの脆弱性スコアの種類は、それぞれ異なる文脈で使用され、脆弱性の技術的な詳細やシステムや組織に与える影響など、異なる観点を評価するために設計されています。システムや組織の特定の要件に応じて、適切なスコアリング方法を選択することが重要です。

脆弱性スコアの重要性 - スコアの役割と活用事例

脆弱性スコアの重要性を明らかにするために、まずはスコアの役割と活用事例に焦点を当てます。CVSSでは、Critical(致命的)、High(高い)、Medium(中程度)、Low(低い)の4つの深刻度レベルが使われています。こういった指標を通じてセキュリティ強化の基盤としての役割を探り、どのようにスコアがリスク評価の深化に寄与しているかを解説します。

企業が脆弱性スコアを取り入れるメリット

脆弱性スコアの採用は企業に多くのメリットをもたらします。CVSSを活用することで、企業はセキュリティ戦略を強化できます。例えば、特定の脆弱性に対してスコアを付与することで、深刻度を客観的に評価できます。これにより、企業はリソースを最適に配分し、最も影響力のある脆弱性に優先的に対処できます。また、スコアを取り入れることでセキュリティ対策の優先順位を設定するプロセスが合理化されます。例えば、高い深刻度の脆弱性には迅速で緊急な対応が求められ、スコアに基づいたアクションプランを策定できます。これにより、レベルの高いセキュリティ対策が展開され、企業は効果的かつ効率的にセキュリティインシデントに対処できます。

脆弱性スコアを活用したセキュリティ戦略の構築

脆弱性スコアを積極的に活用することで、企業はセキュリティ戦略を的確に構築できます。たとえば、重要度の高いデータを保有するシステムにおいて、CVSSスコアの高い脆弱性が検出された場合、即座に対策を講じることが要求されます。このアプローチにより、企業はセキュリティ対策の緊急性を適切に判断し、ビジネスに重大な影響を与えるリスクを回避できます。このようなスコアに基づくアクションプランは、セキュリティ対策を組織全体で統一的かつ迅速に展開できるため、企業はリアルタイムでのセキュリティリスクに対処し、攻撃に対する有効な対策を講じることができます。

スコアに基づくセキュリティインシデント対応の手順

スコアに基づくセキュリティインシデント対応は、迅速で効果的なアクションプランを確立する重要な手順です。まず、深刻度の高い脆弱性に即座に対処するため、レベル別に優先順位をつけた対応計画が策定されます。たとえば、システム内の機密データにアクセスできる可能性がある脆弱性は、他のものよりも緊急かつ優先的に対処されるでしょう。次に、レベルや深刻度に応じたレスポンスチームが組織され、対応が始まります。特に、CVSSスコアが示す脅威のレベルによって、セキュリティエキスパートや法的な支援が必要かどうかが判断されます。このようにスコアに基づくセキュリティインシデント対応の手順は、リアルタイムかつ的確な対策を可能にし、企業は攻撃に対して迅速で効果的な防御策を構築できます。

脆弱性スコアの活用解説

脆弱性スコアはセキュリティ対策の優先順位付けやリスク管理において重要な判断要素となります。以下は、脆弱性スコアの活用事例の一例です。

1. 優先順位付けとリソース配分:

複数の脆弱性が検出された場合、スコアを基に優先順位をつけ、修正やセキュリティ対策のリソースを最も必要とする脆弱性に集中的に割り当てます。CVSSスコアが高い脆弱性は、即座に対処する必要があります。

2. 緊急なセキュリティ対策の実施:

スコアが致命的な脆弱性が発見された場合、緊急のセキュリティ対策が必要です。これにより、攻撃者による悪用を未然に防ぎ、システムの安全性を確保します。

3. ベンダーとのコミュニケーション:

ソフトウェアやハードウェアベンダーとのコミュニケーションにおいて、脆弱性スコアは問題の深刻度を的確に伝える手段となります。ベンダーはこれを受けて迅速かつ適切な修正を行います。

4. ユーザー教育と意識向上:

脆弱性スコアは組織内でのセキュリティ意識向上にも活用できます。スコアが示す深刻度を理解した従業員は、潜在的なリスクに対してより慎重に行動します。

5.深刻度の把握

脆弱性スコアは脆弱性の深刻度を示す重要な指標です。深刻度が高いほど、悪用された場合の影響が大きく、それに伴うリスクも増大します。深刻度を把握することで、組織は最も緊急で対応が必要な脆弱性に優先的に取り組むことができます。

脆弱性スコアに基づくリスク評価は、深刻度やレベル、CVSSを活用することで、組織がセキュリティ上のリスクを正確かつ効果的に理解し、優先順位付けされた対策を実施する上で不可欠なツールとなります。これにより、セキュリティポストチャーの構築と持続的な脆弱性管理が実現されます。

脆弱性スコアの課題と限界 - 正しい評価を行うために

脆弱性スコアはセキュリティ評価において貴重なツールである一方で、正確な評価が困難な場合があります。このセクションでは、脆弱性スコアの課題と限界に焦点を当て、正しい評価を求める中で発生する誤った評価や不足点、特定状況下での制約について探求します。

「脆弱性スコア」の影響範囲/影響度は環境ごとの判断が肝要

例えば、同一の脆弱性スコアであっても、特定のシステムや環境においては深刻度が異なることが考えられます。ある脆弱性がCVSSスコアで7.0と評価された場合でも、実際にはそのシステムにおいては攻撃の難易度が高いため、影響は限定的である可能性があります。逆に、脆弱性スコアが低い場合でも、特定の状況下での悪用が容易であることがあります。このような誤った評価が起きれば、組織は不適切な優先順位付けを行い、効果的なセキュリティ対策が遅れる可能性があります。したがって、脆弱性スコアの限界を理解し、追加のコンテキストを考慮することが重要です。

脆弱性スコアだけでなく全体的なセキュリティ評価が不可欠

脆弱性スコアは一般的な評価基準であり、特定の環境や業界のコンテキストを考慮しきれません。たとえば、特定のシステムにおいて深刻なレベルの脆弱性があっても、スコアが低い場合があります。この不足点に対処するために、CVSSスコアに加えて、組織内の独自のリスク評価や攻撃可能性の分析を導入することが有益です。これにより、特定の状況下での脆弱性の深刻度を正確に理解できます。

また、最新の攻撃手法や脅威に敏感に対応することで、スコアの制約を補完し、より包括的なリスク評価が可能となります。

銀行のオンラインシステムと小規模なブログサイトを比較した場合

たとえば、銀行のオンラインシステムと小規模なブログサイトでは、同じ脆弱性が同じスコアに評価されても、影響の度合いは異なります。銀行の場合、深刻な脆弱性が発生すると多額の金銭が流出する可能性があり、深刻度が高いと言えます。しかし、ブログサイトではユーザーデータが少なく、深刻度は相対的に低くなるでしょう。

このような特定状況下の制約を考慮せずにスコアを評価すると、正確なリスク評価が難しくなります。組織はCVSSの数値だけでなく、自身の環境やビジネスニーズを考慮して深刻度やレベルを見極め、適切な対策を講じるべきです。

脆弱性スコアの評価基準と脆弱性ハンドリング

脆弱性スコアの評価基準とハンドリングは、セキュリティにおいて不可欠な要素です。業界標準の脆弱性スコア評価基準(CVSS)や正確な評価のポイントに焦点を当て、最新の脆弱性悪用スコアリングシステム(EPSS)との連携によって、効果的なセキュリティ対策を探求します。

脆弱性スコアの正確な評価のためのポイント

正確な脆弱性スコア評価には、複数の要素を検討する必要があります。まず、業界標準であるCVSSの深刻度やレベルを考慮しましょう。次に、脆弱性のコンテキストを理解することが重要です。同じ深刻度の脆弱性でも、攻撃の容易さや影響の範囲が異なる場合があります。組織が保有するデータやシステムの特性に合わせて、適切なポイントを設定することで、より正確な評価が可能です。総じて、CVSSの数値だけでなく、深刻度やレベルを踏まえつつ、組織の具体的な状況やリスクアペタイザーを考慮することが、脆弱性スコアの正確な評価に不可欠です。

最新の脆弱性悪用スコアリングシステム(EPSS)との連携

EPSS(The Exploit Prediction Scoring System)とCVSSは、それぞれ異なるアプローチを取る脆弱性スコアリングシステムですが、連携することで総合的なリスク評価が可能となります。以下は、EPSSとCVSSの連携で想定されるメリットです。

1.補完的な利用

EPSSが脆弱性が悪用される可能性を評価するのに対し、CVSSは脆弱性の深刻度を評価します。両方のスコアを組み合わせることで、特定の脆弱性における深刻度と悪用の可能性の双方を把握できます。

2.タイムリーな対応

EPSSが将来の脆弱性悪用の確率を予測するため、特に対策が急務な場合にCVSSのスコアと組み合わせて、よりタイムリーに対応策を検討できます。

3.リアルタイムな情報

EPSSの予測値とCVSSのスコアを組み合わせ、リアルタイムでのセキュリティ情報の理解を可能にします。これにより、セキュリティプロフェッショナルは即座にリスクを評価し、優先順位付けを行えます。

4.リスクマネジメント

EPSSとCVSSの連携により、組織はリスクマネジメントの戦略を強化できます。将来の脆弱性悪用の可能性と現在の深刻度を総合的に考慮することで、リスクの最小化に向けた効果的なアクションを打つことができます。

総じて、EPSSとCVSSの連携は、脆弱性に対する包括的で効果的なアプローチを提供し、セキュリティポスチャーにおいて価値をもたらすでしょう。

脆弱性スコアの重要性と今後の展望

脆弱性スコアはセキュリティ管理において不可欠なツールであり、深刻度やレベルの評価を通じてリスクを的確に把握する役割を果たしています。特にCVSSの採用により、標準的な評価基準が確立され、異なる環境での比較が容易になりました。今後はEPSSなど人工知能や機械学習の進化により、より高度で精緻なスコアリングが期待されます。これにより、深刻度の正確な予測とレベルの効果的な対策が可能になり、セキュリティの向上に寄与するでしょう。脆弱性スコアはセキュリティ戦略の中心的な要素として今後ますます重要性を増していくことでしょう。

日本の商習慣に合う形でVRM(ベンダーリスクマネジメント)領域のサービスを提供し、ITサービスや委託先企業のセキュリティチェック業務を改善しようとしています。
ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
お問い合わせはこちら