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クラウドストレージ「Box」の脆弱性とは?安全な利用方法を解説

Posted on:
April 18, 2024

クラウドサービスは、現代のビジネスや個人の日常において中心的な役割を担っています。クラウドストレージを提供するBoxは特に、その柔軟性と効率性でファイル共有や協業の面で広く採用されています。しかし、これらのサービスが提供する便利さの裏には、潜在的なセキュリティの脆弱性が潜んでおり、ユーザーはこれらの脆弱性に対して常に警戒する必要があります。本記事ではクラウドストレージ「Box」における潜在的なセキュリティリスクと、これら脆弱性に起因する潜在的なリスクを識別し、安全にサービスを利用するための方法を深掘りします。セキュリティ脆弱性の正確な理解と適切な対応策を通じて、Boxをより安全に、効果的に活用するための指南を提供します。

Boxの基本機能と懸念される脆弱性

Boxは効率的なファイル共有と管理を実現するクラウドサービスですが、セキュリティ脆弱性の懸念も存在します。このセクションでは、Boxの主要機能や使用場面と、脆弱性とは何かという基本的な定義、またBoxとの関連性について考察します。

想定されるBoxの使用場面

Boxは、ファイルのアップロード、保存、共有が簡単にできるだけでなく、バージョン管理、コメント機能、タスク管理など、チームワークを促進する多彩な機能を備えています。これらの機能により、プロジェクトの進捗管理、チームメンバー間のコミュニケーション、ファイルのセキュリティ維持が容易になります。例えば、リモートワークをするチームでは、プロジェクト関連のドキュメントをBoxに保存し、各メンバーが遠隔地から最新の情報にアクセスできるように設定することができます。また、機密性の高いドキュメントの場合、特定のユーザーにのみアクセス権を与えることで情報の漏洩リスクを最小限に抑えることができます。これらの特徴により、Boxは多様なビジネスシーンでのコラボレーションと情報共有の中心的ツールとなっています。

脆弱性の基本定義とBoxとの関連性

脆弱性とは、システムやネットワークに存在するセキュリティ上の欠陥で、攻撃者による不正アクセスの原因となります。これらの脆弱性は、ソフトウェアのバグや設計上の問題だけでなく、ユーザーの設定ミスやセキュアではないパスワードの使用によって生じるリスクも含まれます。特にBoxのようなクラウドストレージサービスでは、ファイル共有やデータ管理の利便性が高い一方で、不適切なアクセス許可設定や簡単に推測可能なパスワードは個人情報や機密データ漏洩につながる恐れがあるため、管理者のみならず利用者もこれらの脆弱性に対して注意を払う必要があります。

Boxを含むクラウドストレージ全般に共通する脆弱性

Boxを含むクラウドストレージサービス利用時には、不正アクセスやデータ漏洩等のリスクを高める脆弱性があることを理解することが重要です。このセクションでは、クラウドストレージの利用において発生しうる一般的な脆弱性とセキュリティリスクについて掘り下げていきます。

パスワード攻撃とアカウントの乗っ取り

クラウドストレージサービスにおける最も一般的なセキュリティの脅威の一つが、パスワード攻撃とアカウントの乗っ取りです。ユーザーがセキュアではないパスワードを使用したり、同じパスワードを複数のサービスで使い回している場合、攻撃者はこれらの情報を利用してアカウントにアクセスし、機密情報を盗み出すことが可能になります。さらに、フィッシング攻撃によってユーザーからパスワードを騙し取る手法もあり、これらの脅威によりアカウントの脆弱性が露呈し、乗っ取りのリスクが高まります。

意図しない外部アクセス許可設定

クラウドストレージを使用する際のもう一つの一般的な脆弱性は、意図しない外部アクセス許可設定です。ユーザーがファイルやフォルダの共有設定を誤って行い、機密情報が外部の人間に公開されてしまうことがあります。特に、公開リンクを介して誰でもアクセスできるように設定してしまった場合、不正な第三者によるデータの閲覧やダウンロードが可能となります。これらのセキュリティ上の脆弱性を防ぐためには、共有設定を慎重に行い、定期的にアクセス権限を見直すことが重要です。

Boxの脆弱性およびインシデントの事例

このセクションでは、Boxのクラウドサービスにおける実際に発生した脆弱性やインシデントの事例を取り上げ、それらから学べる点を探ります。具体的な事例を通じて、どのような脆弱性が存在し、またそれらがサービスやユーザーにどのような影響を与え得るのかについて理解を深めます。

Box利用者データの外部漏洩

2019年に実施されたAdversisの調査によると、企業や個人がBoxで共有したファイルやフォルダの多くがセキュリティ脆弱性を抱える安全ではない方法で共有されており、URLを知っている人なら誰でもアクセスできる状態でした。調査チームはBox上で共有されたいくつかのファイルにアクセスした後、共有リンクが一定のパターンに従っていることに気づき、ドメイン内のフォルダ名とファイル名を対象としたブルートフォース攻撃を実施しました。結果として、パスポートの写真、社会保障番号、銀行口座の詳細、雇用記録、ビジネスプラン、未公開の技術データなど、機密性の高い情報を含む数テラバイトのデータが公開されていることを発見しました。このようなデータ漏洩は、個人のプライバシー侵害だけでなく、企業のブランドやビジネスに対する信頼性を大きく損なうリスクを含んでいます。

多要素認証(MFA)バイパス

Boxに関連したもう一つの注目すべきセキュリティインシデントは、2021年にサイバーセキュリティ企業Varonisが明らかにした、SMSを活用した多要素認証(MFA)のバイパスに関連する脆弱性です。この脆弱性を悪用すると、パスワード認証後に生成されるセッションクッキーを攻撃者が入手することで、本来のフローであるSMSを利用した多要素認証保護を迂回し、攻撃者自身のワンタイムパスコードを利用してユーザーのアカウントに不正アクセスすることが可能でした。この事例から、MFAが常に完全な保護を提供するわけではなく、その実装にも注意が必要であることが示されています。

Boxの脆弱性に対してユーザができるセキュリティ対策

Boxのセキュリティ脆弱性への対応として、ユーザー自身がとれる予防策は多岐にわたります。ここではその対策を具体的に解説し、安全なクラウド利用環境を維持するための効果的な方法を紹介します。

バージョン履歴を利用したデータリストア

Boxのバージョン履歴機能は、ファイルが誤って変更または削除された場合に元の状態に戻すことができる非常に有効なツールです。この機能を活用することで、ユーザーは重要なデータを誤って失うリスクを軽減することができます。バージョン履歴を利用するには、Boxの設定メニューから該当ファイルのバージョン管理を有効にする必要があります。有効にすると、ファイルに加えられた変更はすべて記録され、必要に応じて以前のバージョンに簡単に戻すことができます。この機能は誤操作によるデータ損失を防ぐだけでなく、ファイルの不正な変更を検出する上でも有効です。

多要素認証(MFA)の適切な活用

Boxの多要素認証(MFA)バイパスの事例は、MFAの実装にも弱点があることを明らかにしました。しかし、これはMFAが不要であることを意味するものではありません。逆に、適切に活用されたMFAはアカウントのセキュリティを格段に向上させます。Boxはより安全な認証方法として、モバイル認証アプリを用いた多要素認証の利用を強く推奨しています。これはSMSを介したMFAが抱える脆弱性、たとえばSIMスワッピングのリスクやSMS傍受による認証失敗の可能性を避けるためです。ユーザーは、この推奨に従い、セキュリティレベルの高い認証アプリを選択することで、自身のデータをより確実に守ることができます。

アクセス権限と共有設定の見直し

2019年のAdversis調査で明らかになったBox利用者データの外部漏洩インシデントは、アクセス権限と共有設定に関する脆弱性を改めて浮き彫りにしました。安全ではない共有方法により重要な機密情報が無防備にさらされたこのインシデントを教訓に、ユーザーは自身の共有設定を見直し、アクセス権限の管理を徹底するべきでしょう。具体的には、共有リンクの生成時には、そのリンクが外部に漏れた場合のリスクを考慮して可能な限り限定共有を選択し、不要になった共有リンクは速やかに無効化することが求められます。また、ファイルやフォルダの共有に際しては、アクセス可能なユーザーを明確にし、不特定多数への無差別な共有を避けることが重要です。これにより、Box上でのデータ管理の安全性を高め、個人や企業の重要情報を保護することが可能になります。

Box利用におけるセキュリティ課題と脆弱性対応の要点

本記事では、Boxの活用にあたりセキュリティ上の懸念と脆弱性に対する適切な対策の理解が非常に重要であることを説明しました。特に多要素認証(MFA)のバイパスや不適切なファイル共有設定によるデータ漏洩は、ユーザーのセキュリティ意識を高める必要があることを示しています。Boxは、SMSよりもセキュリティが高いとされるモバイル認証アプリの使用を推奨していますが、それだけでは脆弱性に対する防御は不十分です。ユーザーは自身のアクセス権限の管理や共有設定の見直しを定期的に行い、セキュリティ対策を複数層にわたって強化することが求められます。これらの脆弱性に対する積極的な対策が、Boxを含むあらゆるクラウドサービスの安全な使用を保証する鍵となります。

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